実家の紋を入れる理由(わけ)

 お嫁入りした女性がつくる着物には、嫁ぎ先の紋をいれるのが金沢の習慣です。日本の地域によっては、女紋、女系紋を入れます。御紋は自分の所属をしめすものですから、紋が入っているものの所属も示すことになるわけです。最近では少なくなりましたが、結納の時に、お婿さん側はお嫁さんになる方に黒留袖(紋付)を贈ります。五つ紋という最も格の高い式服に自分の紋を入れることで、この家の人になるという意味があるのですね。万が一お別れになるということになっても、どちらの所有物かは、この紋で分かるというものです。昔のひとはよく考えましたね。
 ここからが、あるお客様から聞いたお話。
 結婚してウン十年、いまだにご実家の紋を入れて、お着物を誂(あつら)える方がいらっしゃるとか。聴けばお姑さんや旦那さんの目を気にしてとのこと。 「実家に置いてあるのを持ってきたがや。」と言うそうです。それでも疑う相手に対して、「ほら、実家の紋が入ってるでしょ。」と動かぬ証拠の紋を見せるのだそうです。現代の人もなかなか考えておられます。まさに「この紋所が目に入らぬか!」ですね。
 話しは変わりますが、「理由」と書いてワケと読ませる歌謡曲のタイトルがありましたよね。(古い話しかもしれませんが・・・)若女将の同級生が小学校の時、漢字のテストでこの「理由」を「わけ」と振り仮名を書いてペケ(不正解)になったそうです。本人はとても理不尽に思ったことでしょう。この字を見る度に店主はこの話しを思い出します。
 先生はなんとマセた子やと思ったのでしょうか?二重丸にしてみんなの前で発表するくらい楽しい先生だったら国語の授業も面白くなったのにと思う店主でした。

大宮華紋:女紋