野口さんの長板染め浴衣がやっと入りました。

八王子にお邪魔したのが、去年の11月でした。八王子にお茶屋さんがあることにもビックリ(失礼!)しましたが、そのお座敷で金沢の門外不出の「お座敷太鼓」が披露されたことに、もっとビックリ!ちゃんと金沢のあるお茶屋さんから習ったとか。なかなかのものでした。翌日、時間があるのなら行って見なさいと薦められたのが「長板染の染屋さん」でした。
元々織物の産地ですから機屋さんがあるのは理解できますが、藍染めの染屋さんが八王子にあるとは全く考えられませんでした。さっそく一人でお邪魔しました。
表からは染物をしているようには全然見えない、普通のお宅の奥へ入ると、藍瓶がたくさん並んでいます。そして中庭(張り場)を通って別棟に板場がありました。金沢の加賀伝統小紋染めの坂口幸市さんとはこれまた全く違う「のり」「へら」「型送り」で長板は型付けされていました。聞けばほとんど独学で修得したものだそうで、ご苦労の程が伺えます。もともと藍染め専門で別の職人さんが型付けの仕事をしていて八王子の同じ仕事場でするようになったとか。ところが型付けをしていた職人さんがいなくなって、その型付けも自分でしなければならなくなって、独学で始めたという訳なのです。大変珍しい方です。
その型の細かいこと!これを両面合せて型を付け、藍染めの瓶に何回もつける。一人で出来る量はしれていますね。ですから、野口さんの長板は大変貴重です。ここで染めるものは全て竺仙(ちくせん)さんに納めるものだそうで、見れば「竺仙専用工場」という看板が掛かっていました。
今年になって東京・日本橋の竺仙さんにお邪魔して、何とか廻して欲しいとお願いしました。そのときも野口さんの長板は1反もありませんでした。そしてようやく今月になって入荷したのがこの4反なのです。実は5反仕入れたのですが、1反は写真を撮る前にお客様がお求めになってしまいました。徳島の佐藤さんの藍の匂いがします。やっぱり手づくりの良さですね。思わずうっとりの店主でした。