蘇った振袖に感謝の涙
お預かりしたのは4月の中頃のこと。
もうどうしようもないと、諦めていた振袖。
それは、お世辞にも綺麗とは言えませんでした。
図柄はしっかりした友禅模様でしたが、白地で衿から、身頃、袖に到るまで結構なシミが目立っていました。
とてもこのままでは誰も着ることは出来ないものでした。
きものビフォー・アフターのサンプルを見られ、何とかしてもらえるものならばと、藁をもすがる面持ちでご来店。
店長、スタッフが親身になってご相談を受け、お孫さんに着せたいという依頼者の気持ちにお応えしようと、いろんな知恵を出し、加工スタッフの皆さんのご協力で2ヵ月後、見事に蘇ったのです。
そして引渡しの時。
店主も立ち会ったのですが、思わず「あら~っ!」と依頼者は声を上げました。
私は思いと違う仕事でもしてしまったのか?と勘違いするくらいの驚きの声でした。
しかし、
それは思い過ごしであることが次の瞬間の言葉でわかりました。
「こんなに綺麗になって!」
「ありがとうございます!」
目には涙まで浮かべているではありませんか。
「これならまた孫に着せてやることが出来ます。」
と、深々と御礼されるのです。
私や店長までもがウルウルでした。
「こちらこそ、喜んでいただけて良かったです。」
と、店長。
しばらくは、じ~んとその感動を皆で共有しました。
残念ながら、余りの感動に綺麗になった振袖の写真を撮らせていただくのを忘れてしまいました。
でも、店長や店主の目にはお客様の感謝の姿がしっかり焼きついています。
人命救助にも似た感動を経験させていただきました。
良いお仕事を与えてくださったお客様と素敵なスタッフに感謝です。