加賀友禅作家 大久保謙一さん新作の図案
友禅師さんの一番大変なお仕事は、彩色と思っていらっしゃる方が
多いのではないでしょうか?
県外の方でも、制作風景をごらんになったことのある方は、おそらく
糸目糊を置いた細かい部分を丁寧に一筆一筆、色を指している
彩色という工程か、蒸して糊を落とす友禅流しだと思います。
お仕事として決して簡単とは言いませんが、それ以上に一番悩んで
生みの苦しみのような段階のお仕事が、図案の考案なのです。
前述の京都の千總さんの場合はプロデューサーのような人がいて
その人が図案家の先生にいろいろ指示を出して描いてもらうのですが
加賀の場合は友禅師の方がすべて自分で考え、自分で図案を起こ
さなければなりません。
スケッチから始まり、具体的な着物の図案になるまで構想ウン年
ということもあります。
かつて、当店を舞台にしたサスペンスドラマがありましたが、
その内容も友禅師の図案を考える苦悩を描いたものでした。
この日、大久保さんは今度の新作を大まかな図案として構想を
練っておられるのですが、店主のところへ来られて自分の考えを
述べられました。
この場合、店主が指示することはありません。ご自分の考えを
言って、整理するために来られているのです。
生みの苦しみから解放できれば幸いですし、少しでも素敵な
作品になってもらえればと思います。出来上がりが今から
楽しみですね。