上田外茂治さんの作品が染め上がりました。

図案から、細かく注文をお願いしていました桜の柄の訪問着がようやく染め上がりました。 白生地に写した青花(あおばな:下図を写す際に使う、水で流れる青い色素のこと。細い細い筆で図案を写す)の状態でもかなり細かい注文を入れたにもかかわらず、私の想いを汲んで下さった先生に感謝感謝です。
悉皆(しっかい:染め上がるまでの多くの工程をつかさどる職方、又はその仕事)をしてくれた染屋さんの間でも着るととても良いね!と褒めてくださいました。

加賀友禅の場合、作家さんの落款(らっかん:自分が図案から染までしました、という証明の印)が下前の袵(おくみ)に入ります。最近では袖の裾の内側の残布部分に、加賀染振興組合の証紙に作家名、題名、糸目糊置きした人、地染めをした人の名前が入っています。
番号からメーカー問屋さんもわかります。しかしながら、注文をつけた私の名前はどこにもありません。当たり前のことですが・・・

最近、ご遠方からみえるお客様の声でよく聞くのは「こんな加賀友禅もあるんですね!」「ちょっと違いますね。」「着るとまた、素敵!」などなどです。
少々自慢めいた話しになってしまいましたが、要は店主がプロデュースした加賀友禅は当然違うということです。好きか嫌いかはお客様の好みですから、解りません。当店では「ゑり華好み」ということで店主が図案を変えて頂いたり、地色を変えたりしているだけなのです。
ベンツ車専門に改造を施している「AMG」みたいなものでしょうか?ちょっと違うかな?

10年以上前の話ですが、横浜高島屋さんに加賀友禅を卸させていただいた時期がありました。その際、値札は当然高島屋さんの越後札(えちごふだ:呉服専用の紙製で先をこよりにした値札)にしなければなりません。しかし、呉服部の方は「ゑり華の値札でいいですよ。」「加賀友禅のブランドなんだから。」という言葉を頂きました。有難い事だなと感動しました。

「ゑり華好み」は衣桁(いこう:着物を広げた状態でみせるための陳列器具)に掛けた見栄えも大切ですが、それよりも着られた時に素敵になることを大切にしています。
まさに、今回の作品は着て素敵!掛けても素敵で立派になりました。そして、さりげない柄ですが、大作です。袋帯によって、重く豪華にもおしゃれにもなる素晴らしい着物です。
上田さんとはお同じ地色では染めないというお約束を頂いています。せっかくの一枚だから。とっておきの加賀友禅だから。店主の想いです。

上田外茂治さん、ありがとうございました。


桜の柄の部分を細かくぼかし染で地色を変えています。


後身頃裾の部分。温かみのある上品なきものになりました。